ニューヨーク州Ithaca市在住。
大学を卒業後、米国に渡って40年余り。子供4人の全員が40歳になられたことを記念して、今年、2007年6月、ご家族全員で日本を旅行されました。自分の育った母国を息子や孫に見せたいというお気持ちがあったのでしょう。充実した楽しい旅だったようです。
今回展覧会の作品は、そのときにアメリカから作家が手荷物て持ってきた作品です。薄い和紙の作品を額装することは本当に難しかったです。株式会社大額の宮本さんが、米国にいる作家と何度もTELでやり取りして、仕上てくれました。
展覧会に寄せて Kumi Korf
今回、画廊 編でご覧頂いている和紙に刷られた作品は2005年の制作です。思い切って色をふんだんに使ったフォーヴィズムの画家たちに思いを馳せてみました。(ブラック、マチス、ヴラマンク等)水、木々、庭と肌近く見た風景画とでもいいましょうか。私は銅版画を使って版を作ります。薄い和紙の作品は、スピットバイトというやり方で銅板の表面にイメージを作りました。アクアティント(松脂の細かい粉末をやきつけてトーンをつくるゴヤが駆使したテクニック)をほどこした銅板の上に直接酸を含ませた筆でイメージを描きます。この酸が松脂に載っていない部分の銅を腐蝕します。それが作業過程を経た後で絵画となります。2枚の銅板を隣り合わせ、つくりたいイメージになりますようにと念じながらたっぷりの酸で筆を動かします。若しかしたら大失敗になりかねない緊張感は、大きな作品を制作するときには必要なものです。作品を刷るときは、左右を入れ替えたり、同系の色どうしをしてみたりと、何度も重ねて色や線のイメージを作り、一筆のイメージと刷っていくうちに調和をもたらし まとまってきます。
日本で生まれ、日本の四季の移り変わりを身の中に収めた私が表現する世界の中に、静けさを感じていただけるのでしたら、私としてはこの上なく幸せです。
アメリカの渓谷や滝、又湖に囲まれ林の中に住んで40年余りになります。私の作品は、自然によって育まれたといっても言い過ぎではないでしょう。モネもあの土地、ジャヴェルニーに40年住んで、睡蓮の絵を描き続けました。
美術を愛し、作品を制作する者のひとりとして、美術史をひもときある作品に感動して、その作家の影響をうけることは、ごく当たり前のことであり、皆様にお勧めできる良い方法だと思います。オリジナルは自分自身ですので、それらに影響をうけても必ずこなされて栄養になることは自然なことです。
私の場合も色々な意味での巨匠たちが遠くから、また近くからこちらを向いて応援してくれています。有史前のアルタミアの洞窟絵を描いた巨匠たち、ギリシャの建築家達、ポンペイの壁画をなした画家たち、ルネッサンスも勿論忘れられませんが、もっと近くになっては、レンブラント、ゴヤといった画家達、版画の世界でも彼らは巨匠です。レンブラントとほぼ同じ時代に日本では光悦が活躍していました。この方とは、ここ数年一番親しくしていただいています。大好きな作家です。もっともっと近くになっては、ピカソ、マチス、ミロ、この方たちも版画の巨匠です。ごく最近、ニューヨークの画廊で1枚のピカソの版画の前で彼がどのようにして、このプリントを制作したのかと謎解きの様な時間を過ごしました。結果として解けなかったのですが、ああでもない、こうでもないとかんがえあぐねる間にまた、別のやり方を思いつきました。
私と同時代を生きているアーティストたちから学ぶことも多いです。アートはアートを生むと私の先生は教えてくれましたが、本当にそうだと思います。私自身の独創性は、育ちながら、変化しながら、継続されて今日に至っています。
(2007年10月 アメリカ ニューヨクーク州Ithaca市にて)




