GALLERY AMI & KANOKO

わたしにとっての木版画づくりは、生活の中で通り過ぎていく『すこしだけおもしろい気がする』を画面に留めようと試みる作業です。
何色もの版木を重ねて表現する水性木版という技法には、いくつもの版木を要します。赤の版木、青の版木、黄色の版木…それぞれの版木には、それぞれにモチーフがぽつんぽつんと孤立しています。かたちと隣合う面を彫り出してしまわないことには、それはかたちとして成り立ちません。そうしてできた不器用な輪郭と、その周囲の彫り跡とには、自分の生き方のでこぼこがそのまま現れているようで、あまりいい気持ちのするものでもありません。それでも、白い画に次々と色がのっていき、ついに世界が完成するとき、やっとわずかに安堵することができるのです。自分ひとりのルールの中で悩んだり喜んだりするちいさくて狭い制作の世界と、それを周囲とつなげていくための足がかりを、今回の展覧会、アーティストトークで探せたらいいなと思います。