オブラートにイメージを顔料プリンターで転写した作品。オブラートの質感が絵画表面に表れ、おぼろげながら作品イメージが浮き上がって様子は非常に面白く感じられます。
展覧会レビュー
作家が作品を作る方法は様々です。
その1つには、自分の表現方法を固定し(例えば、油絵の具で平面を描くや、金属で立体を作るなど)、その中で、その表現を深く探求し、自身の表現を完成させていくタイプがあります。このタイプの作家は、直接的でも間接的でも、その素材(絵の具や金属)に触れることが好きで、その素材の感触を楽しみながら制作をしている感があります。見る側からよく、”この作品をつくるのに、他の素材ではいけないですか?”と質問されることがあります。理屈の上では、他の素材で同じものが作れますが、このタイプの作家は自分が使っている画材や材料でしたか表現を完結することができません。これは人間だから仕方がないと私は思います。こういう作家の場合、極端ながらバイオリンニストがピアニストになれないのと同じだと思います。
勝山信隆は、全くこのタイプと異なる作家だと思います。表現のための材料、方法、やり方などをまるで化学の実験でもしているが如く次から次へと試し、表現の多様性と可能性を画材の中に求めています。そこに、美術がもつ”面白さ”を導き出そうとしているように窺えます。今回の展覧会でも、2週間前まで手法がまとまらず苦労したようです。ようやくまとまった手法は、食用オブラートの上に下地を塗布し、そこに顔料インクのプリンタでイメージを印刷し、最終的に作品画面大の下地にオブラート貼るというものです。食用オブラートの質感が表面に表れ、現代美術が求めているオリジナリティが感じられる作品となりました。(記:中島由記子