&nsp;
長らく取り組んできた銅版画の作品から油画の平面作品に変わった初めての展覧会。
森の中にある川と滝つぼを描いた作品。平面が空間に浮いているため、その作品の上や下の部分は森の木々や水の流れが高覧者の想像に任されます。水の動きが感じられ映像的な感じがします。
平面作品は常に壁にぴったりとついているため、絵画が縁は、作品と現実の境界となり、はっきり絵画が終わったように感じられます。今回の試みでは、人が座した空間の位置に森の中の川の流れを表現した具象画が浮いているため、空間の向こう側や上や下が想像の余白になっています。
銅版画から油画に転向した作品として、銅版画では表現が難しい動きが画面の中に上手く表現されているように思います。
「記憶」と「記録」-------岡谷敦魚
昨年、久しぶりに油絵を描いた。
僕の中で、版画とは違う何かを再発見した気がした。
記録とは、版画のこと
記憶とは、油絵のこと
版画は自分を映す鏡のようなものと感じてきた。僕は、その中に映っている大きな意味での自然を描き写してきたように思っている。版におこるさまざまな自然現象に自分の意志を寄り添わせるように記録していくこと。それが作品だと感じてきた。しかし油絵を描いたときに、いままで覗いていた鏡が、不意に合わせ鏡になったように感じた。映っている物は無限に続く自分自身。それでしかない。
今回の展示は、この驚きそのものがコンセプトになっている。
いまはこれ以上の言葉は見あたらない。