共棲
現代美術と現代いけばなのコラボレーション
二人のアーティストの作品が、ギャラリーに棲みかといたします。
展覧会の企画について
2009年の新春展では、”真っ白で無機質な空間”、”展示替え”というモダンアートの美術館・ギャラリーのもつ二つの側面に対峙する展覧会を企画いたしました。ご存知の通り、ぎゃらり かのこ(2F 和室）は、ホワイトキューブではありません。床の間や襖が有機的で物語をつくります。ここで二人の作家の作品が共棲いたします。作品が住処を見つけてそこに留まるというより、作品が棲みつくようなそんなイメージです。コラボレーションといった共同作業のようなものでもありません。家屋敷に人が棲みつくように、個々の作品が”場”を棲家といたします。
アートが真っ白いホワイトキューブに掛けられるようになったのは１９００年半ばくらいからでしょうか。丁度そのころ、ＮＹのマンハッタン島のギャラリーが注目を浴び始め、キュビズムの時代からコンテンポラリーアートの時代に移りました。
真っ白な空間は無機質で、各々の作品はそれぞれ自立していました。西洋の教会へ収めるためにつくられた宗教絵画とも目的が異なりましたし、パリのサロン絵画とも性質を異にしていました。鑑賞者は、普段の生活から離れた空間でアートを体感し、鑑賞することが一般的になりました。ＮＹのＭＯＭＡ（モダンアート美術館）、ホイットニー美術館、パリのポンピドーセンター、大阪の国立国際美術館など、建物の外観こそ違いますが、内装はみなホワイトキューブです。
こういった美術館の特徴は、企画展が多く、新しい作品が次から次へと展示替えされます。常設展示する作品も数多くもつため、展示替えによって作品を見せる仕組みになっています。
世界中のギャラリーもホワイとキューブ・展示替えと、美術館と同じような性質を持っています。
今回の展覧会では、こういった現状に反発してというのでしょうか、和室のぎゃらり かのこに共棲するイメージで作品展をおこなます。画廊ですから、展示替えするのはいたし方ないのですが、作品が長らくここに棲み付いているようなイメージが伝われば面白いかと思います。
昨日展覧会初日を迎え、田中美智甫が活けました松の枝がそろそろ根を張り、棲みつきだしてきました。
（画廊 編 ぎゃらり かのこ：中島由記子）
関淳一氏 からのＭＡＩＬ
展覧会を開催するにあたって、様々の意見交換を作家と行っています。それらのコミュニケーションからギャラリーと作家が触発され、一つの展覧会が出来上がっていきます。参考までに掲載いたします。
文脈については、作家のその時の考えや想いをライブ的に伝えた方がいいと考え、特に校正などの手を加えていません。
【2008/12/3】
展覧会のタイトルですが、共棲というのもいいですね。あと共鳴とか共振などという言葉も思いつきました。極度に衛生的な現代の都市生活は、共棲を拒否しています。光や風、細菌に始まる様々な生物との共棲の上に、私たちの生がなりたっていたはずが私たちは今その関係を拒否しようとしています。湿度も温度も空調でつくり室内からは埃も虫も閉め出します。
「共棲」何かいい感じがします。共生でも意味はかわらないのかもしれませんが、共棲の文字からは何か伝わるものがある気がします。
【2008/12/17】
先日、ピカソの線を例に絵画の本質は日本も西洋も変わらないと言う様なことを話しましたが、最近西洋の絵画にピンとくることが少なくなってきました。
何かなと考えてみると、絵の空間のとり方にあるように思います。西洋の絵画の空間は画面の中で完結する世界ですが、日本の絵画の空間は画面の外にひろがっていきます。これは、例えは襖絵や屏風絵を思い描いていますが、由記子さんがおっしゃった生活の中に生きる美術の発想なのだと思います。また色や質感についての感覚も、由記子さんが黒に対するとらえ方ねの違いについて話されましたが、黒といっても墨の素材自体の色と出会っていくような感覚があり、墨が描かれた対象の色になると同時に、墨や紙といった素材そのものとして見えてきて、空間のとらえ方とともなって、絵が外の世界とつながっていることを感じさせてくれます。今私は生活空間、生活の時間とつながる絵を求めているのだと思います。
