この度、パリのオークションに西藤博之氏の木版画が出展されました。オークションとはいかなるものか、パリジャンは日本のどういうところに興味をもっているのか、などなど色々な興味を抱きつつ、パリに行ってきました。
オークション前の内覧会は、オークション前々日、前日と二日間あり、出品物に興味がある人はそこに出かけて直に物を見ることができます。私も内覧会でオークションんp出品作品の全貌が見れると興味をもって出かけました。今回の展示場所はルーブル美術館より北へ徒歩10分の場所で、「倉庫のようなところ」と聞いて期待せずに赴いたのですが、いやいや倉庫とは言えないくらいいい感じの場所でう広い建物の中庭にガラスの屋根を張ってつくった「パサージュ」型の大広間のようなところで、天井の高さも充分あり、太陽の光で作品が見れるという非常に気持ちいい空間でした。
「日本美術の民芸からコンテンポラリーまで」と題したこのオークションには、古い日本家屋に残っているいる古布でパッチワークした布団カバーや店の看板、能の面、着物や羽織、扇子など様々な民芸品から現代美術まで出展されていました。今回のオークションでは、古美術や骨董のようなものは見受けられませんでした。
着物などは、フランス人が好みそうな大柄な図案のものや染め色もカラフルなものが集められており、日本人好みのシックで渋いものではありませんでした。日本人が高級とする織物の「大島」や「結城」「紬」や小紋、無地の着物はなく、銘仙のような派手なものが多かったです。そういった意味では、日本人の本来の美はまだまだ遠く、フランス人には理解が難しいということがよく分かりました。
日本人にはそれほど高価とは思えない古い看板や古布の木綿の継ぎはぎでつくった布団カバーなど、恐らくインテリアとして楽しむと想像できるものが出展されていました。どちらにしても”古いもの”でかつ生活に密着したものほど、人間の想像を掻き立てるというのがよく分かりました。日本人がいう「高級品」は、かえって日常生活から遠く、想像する部分を提供しないのでしょう。
現代美術のジャンルでは、西藤氏の作品は、堂々と会場中に掛けられ、横には現代美術の大家、草間弥生、村上隆、森山大道、菅井汲、松谷武判、高山登氏等が選出されており、オークションに掛けられました。西藤博之氏の作品も堂々とその彼らの中に混ざって紹介されました。
GAIAの社長は、オークションの世界では珍しい女性で、西洋美術を大学で勉強した後、オークションについてさらに学び、現在のGAIAを立ち上げたと聞きました。
今回のGAIAのカタログに興味がある人はPDFでご覧になれます。
GAIAのカタログ→
日本が、フランスでどういうふうに紹介されつつあるのか、参考になるカタログです。
このGAIAが日本の作品を手がけたのは初めての試みでした。
GAIAが日本の作品を中心としたオークションを今回企画した理由を考えてみますと、10年以上前から始まったアフリカンアートの熱が冷め、次に移ったアボリジニアートもそれほど活気を見せない今、まだ価格が上がってなく個性のある「日本:JAPONS」のオークションカテゴリを立ち上げ、オークションの特徴を出していこうという狙いがあったと思います。
今回のオークションは、まだまだ投資の段階で収益がでなかったと結果を耳にしました。それでも、我々も含めて大きな前進があったように思います。
明治以降、西洋化が進んだ日本ですが、「日本茶」「日本酒」から始まり、昆布やかつおの出汁文化、着物、建築を始め、日本でしかない文化要素がたくさんあり、それが現在も残っています。陸続きの欧州から見ると、随分特徴があるのでしょう。
このオークションでは、西藤氏の作品がパリに行く届けられる前からオークションに係わってきました。出展作品の僅か3点を通してですが、オークションの流れやオークションを作っていく作品の中身、それを集める方法等々を垣間見ることができました。
今回の作品の日本の現代美術部門のキュレータであった、ヴァレリー氏と会って話をする機会を得ました、彼女は、フランス北部のリール出身で、大学で日本美術で博士を取得し、ガイドなどの仕事をしながら日本を紹介する仕事しています。彼女は、日本茶に興味をもっていて、現在日本酒に挑戦しているらしいです。しかし、日本酒はなかなか味が分からないと言っていました。
日本人建築家でパリ在住の杉貴子氏が今回のオークションのお手伝いを色々してくださいました。第三者としての彼女の意見はおもしろかったです。「ポンピドーセンターで、日本人作家の展覧会を企画することが先ず大切。それによって知名度が上がっていくのでは。」