KUMI KORF Artist statement
何をしていても、どこにいても、カラダで感じ、目で見る光や空気、 風景や空、日ごとに出くわす日常の様々、それらがやがて紙の上にイメージとなって生まれ変わってくる… これが実現できた時に"I am an artist."と言えるのではないでしょうか？ この頃、そう言っている私自身を感じはじめました。Ithacaという土地に住んでそろそろ５０年になります。
この土地の冬の長さ、灰色の空の日の多さにも馴れました。
湖あり、滝や渓谷に恵まれ林の中に住んでいる私には、感動する機会は数多く、
いつも私のartistを支えてくれる自然を息深く吸い込んでいます。
あの色、あの形、あのでき事、あの想い出…がある作品の出発点となったら…
それはどこが深い所に所蔵されていて、その瞬間にだけ浮上してきたある贈り物なのです。
エッチングプレスの強くて重い動作が止まって銅板の上から紙をはがす時、
このプルーフの出来の良さ悪さがわかるその瞬間、
それが良ければ大きなご褒美をいただいたと感じる時です。
それは身に余る幸運と思え、本当に版画制作天国(printmaking heaven)といえるでしょう。
ところが地獄もあります。
chine colleがどうしてもうまくいかなかったある月曜日、
あの日の失敗なくしては、和紙だけに刷ってみようという冒険心は生まれてこなかったでしょう。
それは贈り物でした。あれから１１年、あの時に出会った和紙(アカトガシ)と、ずっと付き合っています。
エッチング用の硬い紙の存在なくしてです。
この私だけのやり方が、とても私に合っているのだと改めて確信している今日この頃です。
もうひとつ、私のprintmaikingは伝統的なテクニックを使いながら、
もっと絵を描くという動作に近いかと感じています。
下塗りのあるキャンバスに形を表現しながら色合いを考える、
私の場合は紙ですが、形、マーク、トーンは銅版の表面に刻み込まれていて、
いつでもその時になったらと出番を待っています。
過去の経験からインクたちとも長い付き合いがありますので、
いつも相談しながらイメージ作りを進行します。
そのために何度も、プレスを通って重なりを導いていくのですが、
どこで止めるべきかの判断は、絵の場合と同じだと思うのです。
Profile
1959 東京藝術大学美術学部建築科卒業
1977 コーネル大学美術科大学院修了
パブリックコレクション
H.F. Johnson Museum of Art, Ithaca, NY
Library of Congress, Rare Books collection, Washington, D.C.
New York Public Library, New York, NY
Getty Research Institute, Special Collections, Los Angeles, CA
University of Virginia Art Museum, Charlottesville, VA
Victoria & Albert Museum, Special Collections, London, UK
